早期対策がトラブル防止の鍵!アフィリエイト広告規制との付き合い方

インターネット広告

2021年、日本で初めてアフィリエイト広告に対する景品表示法に基づく措置命令が消費者庁から出され、業界内で話題となりました。
一方で、2020年度のアフィリエイト市場規模は3,000億円を超えると言われ、アフィリエイト広告を含む成果報酬型のインターネット広告は今後も堅調に推移することが見込まれています。

この記事ではアフィリエイト広告の現状について法制度や業界の動きを交えながら説明すると共に、広告主・事業者・アフィリエイター共に理解しておきたいルールや課題・注意点をご紹介していきます。

アフィリエイト広告とは

アフィリエイト広告はインターネット広告の一種で、消費者がアフィリエイト広告(リンク)を経由し、広告主のサイトで商品やサービスを購入したり会員登録したりすることを目的としています。
また、アフィリエイターと呼ばれる媒体主は、自身のWebサイトやブログ、動画などの媒体に、広告主の商品やサービスの広告を掲載し、広告収入を得ることができます。

ASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)は広告主とアフィリエイターを仲介するサービスで、広告主が定めた成果条件を満たすと、ASPを通してアフィリエイターへ報酬が支払われる仕組みです。

アフィリエイト広告の仕組みの一例図
アフィリエイト広告の仕組みの一例

アフィリエイトの種類や特徴についてはこちらの記事で詳しく説明しています。

アフィリエイト広告を取り巻く環境

アフィリエイト広告の市場規模が増加傾向にあると同時に、2020年には市場に影響を及ぼす可能性のある出来事が起き、業界が騒がしくなっているようです。具体的には大きく2つあり、ひとつはApple社のトラッキング防止機能の強化(ITP※Intelligent Tracking Prevention)による影響です。ご存じの方も多いと思いますが、既存の方法でユーザーの行動を追跡・分析することが難しくなりつつあります。国内では2020年3月に改正個人情報保護法が成立し、2022年4月には施行が開始されますので、広告配信や成果の計測などにも影響が出ると考えられています。

もうひとつ注目されているのが、消費者庁による虚偽・誇大広告に対する規制強化の動きです。2020年12月には同庁による実態調査が始まり、2021年に入ってからも『アフィリエイト広告等に関する検討会』が継続的に開かれており、こちらの動きからも目が離せません。

とは言え、マイナス要素ばかりではありません。

〇 大企業によるアフィリエイト広告への予算拡大
〇 サブスクリプションモデルの需要拡大
〇 SNSや動画プラットフォームなど集客チャネルの活用拡大
〇 キャッシュレス対応分野の拡大、EC化率の向上
〇 コロナ禍(非接触ニーズ)によるEC利用の増加
〇 アフィリエイト市場参入企業の増加の可能性

など、引き続き成長材料が揃っているとも言われています。
アフィリエイト広告は不安という理由だけで導入をためらっていて、その間に多くの機会損失が生まれてしまうのであれば、広告との向き合い方を探りながら出稿実績を作ってみるというのも一考に値するのではないでしょうか。

アフィリエイトプログラムの仕組み(全体像)と各プロセス

ここではもう少し詳しく業務や契約について説明していきます。一企業がすべてをコントロールしているわけではなく、各セクションごとに関係者同士で依頼や契約があり、報酬・費用などが発生するのが特徴的です。置かれた立場によって制約やルールが異なるため、正しい情報に基づく対策が重要となる点を理解しておいた方が良いでしょう。

アフィリエイトプログラムの仕組み(全体像)解説図
出典:消費者庁「アフィリエイト広告をめぐる現状と論点(事務局資料)」P8より抜粋

アフィリエイト広告の関係者が関わるプロセス

提携先との契約内容や個別事情によって関与する業務は変動しますが、以下は一般的なアフィリエイトプログラムを参考として挙げてみました。

事業者関わるプロセスの一例
広告主または広告代理店
  • 条件設定(報酬、提携承認基準、成果承認基準、禁止事項など)
  • ASP事業者とアフィリエイトサービス契約を結ぶ
  • ランディングページ準備
  • ASP事業者に対する提携審査承認
  • アフィリエイターへの画像バナー等の広告素材指示書等の提供
  • 広告掲載前の審査確認、修正指示
  • 掲載後の審査確認、パトロール等、修正指示
  • 成果の確認
  • ASP事業者への報酬の支払い
ASP事業者
  • 広告主または広告代理店とアフィリエイトサービス契約を結ぶ
  • 提携アフィリエイターを募集し、パートナー契約を結ぶ
  • 広告成果の測定
  • アフィリエイターへ報酬の支払い
アフィリエイター
  • ASP事業者へ提携申請し、パートナー契約を結ぶ
  • 対象案件の中から受託するものを決め、条件内容や素材指示書を確認する
  • アフィリエイト広告の作成
  • 広告主または広告代理店へ完成した広告の確認を依頼
  • 必要に応じて修正及び出稿、媒体社側からの修正内容の反映
  • ASP事業者から報酬の受領
媒体社
  • アフィリエイト広告の審査
  • 広告内容に問題がある場合の修正指示
  • 広告掲載

広告主が対応する領域は、提携先との体制や契約内容によって異なります。自身が関わる領域が多ければ負担も大きくなりますが、相手方に任せることが必ずしも得策とは限りません。発注や指示に責任を持つのは当然のこと、掲載後の確認まで一連の流れを把握し、きめ細かく関与することでのメリットもあります。

規制強化の流れで広告主責任にも注目が集まると思われますので、常に目を光らせているという姿勢は、いざという時の助けになるはずです。もちろん、信頼のおけるASP事業者やアフィリエイターを探し委託することも必要です。自社に適した連携のスタイルや契約方法を探していきましょう。

虚偽・誇大広告など違反事件に発展したアフィリエイト広告

注目を集めた4件の事例

消費者庁により令和3年6月から「アフィリエイト広告等に関する検討会」が定期的に開催され、学術関係者や業界団体、広告関係者、消費者団体など様々な立場の方による意見交換が行われています(後述)。検討会での議論を踏まえ、アフィリエイト広告に関する景品表示法の適用と不当表示の防止のための取り組みに対して一定の結論が出されるとのことですが、このような対策が急がれることになった背景に、以下のような違反事件が存在しています。

違反事例1:景品表示法違反(優良誤認と有利誤認)

違反行為者A社(通信販売業)
商品名及び商品分類食品、石けん、下着
違反の詳細2018年6月 景品表示法違反(優良誤認と有利誤認)による措置命令および課徴金納付命令が出された。

  • 限定価格と通常価格の比較での有利誤認表示
  • メーカー希望小売価格と通常価格の比較での有利誤認表示
  • 痩身効果、美白効果、シミ・しわ・たるみ解消効果、豊胸効果、等の優良誤認表示
該当案件とアフィリエイトとの関連アフィリエイトサイトの運営者に対して(商品に係る)自社ウェブサイトを提示し、サイト内での記載内容を踏まえたこれらの商品に係る口コミ、ブログ記事等を作成させ、当該自社ウェブサイトへのハイパーリンクと共に当該アフィリエイトサイトに掲載させていた。
補足措置命令の中でアフィリエイトサイトの表示に対して言及されたのは初。当時の消費者庁 課長が「アフィリエイトについて広告主の責任を積極的に追及していくというメッセージと受け取ってもらって構わない」と発信したことで注目を集めた。

違反事例2:景品表示法違反(優良誤認と有利誤認)

違反行為者B社(通信販売業)
商品名及び商品分類食品
違反の詳細2020年3月 景品表示法違反による措置命令および課徴金納付命令(優良誤認と有利誤認)が出された。

  • 1日あたりの購入価格に関する有利誤認表示(通常価格ではなく初回限定価格での算出結果を表示)
  • 痩身効果に関する優良誤認表示(商品摂取だけで容易に痩身効果が得られるかのような表示)
  • 受賞歴に関する優良誤認表示(複数の雑誌を挙げてランキング1位を獲得したとの表示をしていたが、全ての雑誌で1位を獲得した事実なし)など
該当案件とアフィリエイトとの関連アフィリエイトサイトにおいて、「3ヶ月で7kg落ちた方法を紹介!」等と記載するなど、あたかも、本件商品を摂取することにより、容易に痩身効果が得られるかのような表示をしていた。
補足同案件は、特定商取引法違反により3か月の業務停止命令も受けている。具体的な違反内容は、誇大広告等、顧客の意に反して売買契約の申込みをさせようとする行為(インターネットの申込みの最終確認画面で、定期購入契約の申込みとなることが容易に認識できる表示がなかった)。

違反事例3:薬機法違反

違反行為者C社(通信販売業)
商品名及び商品分類食品
違反の詳細2020年7月、薬機法違反の疑いで関係者が逮捕された。
具体的には、医薬品の承認を得ていないにも関わらず、肝臓疾患に効果があるかのような内容で広告を行った。具体的には、記事広告において「肝臓疾患の予防に効果がある」「無敵の肝臓を手に入れる」と宣伝したり、「脂肪肝がお酒も食事も我慢せず正常値に」や「ズタボロだった肝臓が半年で復活」など捏造した体験談を掲載した。
該当案件とアフィリエイトとの関連摘発対象となった広告アドネットワークで配信されたアフィリエイト広告によるもの(こうした状況から、広告代理店であるASP事業者の関係者も逮捕されることとなった)。
補足2020年7月に同社従業員と広告代理店・広告制作会社の代表、従業員を含む複数名が薬機法違反の疑いで逮捕された。取引先の広告代理店を含め摘発された事例はほとんどなく、異例の事態となった。同社は過去(2014年)にも健康食品の広告において消費者庁から景品表示法における措置命令を受けている。
関与したとされる広告代理店及び従業員については略式起訴(罰金)の事実を公表している。

違反事例4:景品表示法(優良誤認)

違反行為者D社(通信販売業)
商品名及び商品分類育毛剤
違反の詳細2021年3月、景品表示法(優良誤認)に基づく措置命令が出された。具体的には、『有名大学がマウス実験で実証』『90%がフサフサになった育毛剤』『世界的な科学誌が推奨の毛髪再生法 有名医科大のマウス実験で実証済』などと表示し、本件商品を使用するだけで、本件商品に含まれる成分の作用により、短期間で、外見上視認できるまでに薄毛の状態が改善されるほどの発毛効果が得られるかのように示す表示をしていた。
該当案件とアフィリエイトとの関連措置命令を受けた案件は、アフィリエイトサイトに表示された広告であった。
補足1,747万円に及ぶ課徴金納付命令も出された(令和3年9月)。

景品表示法の考え方(表示規制の対象)とアフィリエイト広告との関係

景品表示法の考え方のイメージ

ここではアフィリエイト広告において『誰に責任があるのか』について、消費者庁が示す考え方と共に整理してみたいと思います。
※法令が混在すると分かりにくいため、景品表示法に関して説明していきます。

  • 景品表示法における表示規制の対象となる事業者は誰か?
    • ⇒ 該当の商品・役務を供給しており、不正表示を行った事業者であること
      ※供給主体性、表示主体性が認められた場合
  • 供給主体性とはどう判断されるのか?
    • ⇒ 商品・サービスの提供や流通の実態を見て、実質的に判断される
  • ◇表示主体性がある、とはどういうことか?
    • ⇒ 表示内容の決定に関与した事業者に認められるもの、又は(自ら・共同して)積極的に内容を決定した場合、他者の表示内容に関する説明に基づき内容を定めた場合、他者に決定権を委ねた場合、を指す

少し分かりにくい内容かもしれませんが、ポイントとなるのは

  • ◆商品や役務を提供したのは誰か?
  • ◆表示(広告に限らず商品包装や添付文書なども含む)を「決めた」「任せた」のは誰か?

の2点に当てはまるかどうかです。「決めた」「任せた」について更に補足すると、「この内容で進めてください」と了承するのはもちろん、提案に「いいですね」とOKすること、「いつも通り進めてください」と依頼して完了させることも含まれています

また、景品表示法の解釈としてアフィリエイターは「供給主体者」に該当しないため、不当表示(景品表示法違反)の措置を受けるべき者にはならないことから、広告主はアフィリエイト広告の内容においても適切に管理することが求められていると言えるでしょう。

※薬機法や健康増進法など「何人も」が対象とされる法令もありますので、アフィリエイターやASP事業者が一切の処罰対象とならないわけではありません。

景品表示法についてはこちらの記事でも解説しています。

広告主として考えておきたい違反広告にならない為の対策

不当表示(虚偽・誇大広告)や薬機法違反などで措置命令を受け責任を問われるのは、原則として商品やサービスを提供する事業者(広告主)です。たとえ文章やビジュアル・デザインなどのすべてを作成したのが第三者(アフィリエイター)であっても、広告主の責任が免れないことを認識した上で常に適切な対策を取っておくことが重要だと思います。
実際の対策にどの程度の手間・費用・時間をかけるべきかは事業者ごとに状況が異なると思いますが、ここではいくつかのポイントを紹介していきます。

1. 提携先(ASP事業者)の選定

アフィリエイト広告を掲載する上で不可欠なのが、仲介者であるASP事業者の存在です。
現在、国内では70を超える事業者が活動しているとの情報もありますので(消費者庁)、狙いたい広告効果に適した事業者を選ぶためにはどんな視点が必要でしょうか。

  • ASP事業者としての規模および実績
  • 初期費用・月額費用・成果報酬費用・手数料
  • 広告掲載できるサイトの分野、量
  • 抱えているアフィリエイターの数や質

これらは一般的な選定基準となりますが、自社のブランドイメージを損なったり違反広告のリスクを避けるためには、広告掲載先サイトの審査状況やアフィリエイターへのフォロー、顧客(購入者)満足への取り組みなど、視点を変えて検討してみるのも良いでしょう。

2. 契約内容の設定

ASP事業者との契約では、コストに関することや期日、依頼方法、報告の規定などさまざまなルールや条件が設定されるものですが、ここにリスクに対する責任の所在などを盛り込めるといざという時に安心です。

  • 違法サイトや、社会的に問題のあるサイトに広告が掲載されてしまった場合
  • アフィリエイターの表現により、虚偽・誇大広告で法的責任が発生した場合
  • 広告主の機密情報や個人情報が漏洩された場合

など、アフィリエイト広告に起こりやすいトラブルや事件に関する情報を把握し、ASP事業者と確認しながら事前に対策を決めておくことがポイントです。

3. 広告依頼方法

ASP事業者経由での依頼でもアフィリエイターに直接依頼する場合でも、提携前には充分な説明を行い、指示や禁止事項は明確に伝える必要があるでしょう。

具体的には・・・

  • 商品・サービス情報(機能や性能、特徴、購入条件、法的に表示義務のある事項 など)
  • 商品・サービス画像やロゴマーク、契約タレント画像の使い方
  • 禁止される表現、文例
  • 関係法令やガイドラインなど、参考とできる情報元について
  • セール品をはじめ特定の販売条件について(期限や購入条件など)

アフィリエイターの経験や能力には個人差があるため、伝え方に配慮しましょう。また、いつでも問合せできる仕組みを用意しておけば、お互いに安心です。

4. 確認方法

『アフィリエイト広告等に関する検討会』でも意見が挙がっていましたが、掲載が開始されたすべての広告を常に目視で確認することは、技術的にもリソース的にもおそらく不可能だと言われています。

全件チェックすることが目的ではなく、不当表示や違反広告、実態と異なる情報を含む広告(リンクエラーなど)の掲載を防ぐことが目的ですので、効果的に確認や監視が出来る方法を自社に見合った形で模索していきましょう。

ASP事業者や広告代理店と連携し、保有するシステムや情報に応じた形で確認を分担してもらうのも有効ではありますが、違反広告の責任は原則広告主(販売事業者)であることを理解し、提携先に過剰な期待や依存をしないよう注意が必要です。

監視で発見した違反広告については、適切かつ迅速に対応しなくてはなりません。
修正や停止依頼、場合によっては提携解除とするなど、事前対策は万全にしておきたいものです。

消費者庁『アフィリエイト広告等に関する検討会』より

アフィリエイト広告等に関する検討会のイメージ

不当表示による消費者被害や相談が増加している状況を受け、消費者庁が主体となってアフィリエイト広告の規制に関して検討していく動きが始まっています。2021年6月から定期開催されている『アフィリエイト広告等に関する検討会』の参加者は、学術関係者・法律家・通販業界やインターネット広告団体および広告媒体社・ASP事業者団体・消費者団体など幅広い立場の関係者で構成されており、2021年中には一定の結論を出すため、積極的な意見交換が行われてきました。

現状および課題の一例

消費者庁サイト内に設置されている「アフィリエイト広告等に関する検討会」のページには、それぞれの立場から考える課題や要望が挙げられていました(2021年12月時点)。一例としてご紹介します。

広告の取り締まりに関して

  • 広告表現のトレンドは常に移り変わるため、新たな規制を設けてもイタチごっこになりやすい。
  • 悪質な事業者とそれ以外を選別した上で対策しないと、リソースに限界がある。(広告そのものは膨大かつ流動的に存在するため、全件を把握するのは不可能)
  • 以前のように広告を現物で入稿するというプロセスがほとんどなくなり、自動での掲載方式に移行しているため事前の内容確認が不可能である。
  • 配信媒体や配信時期などが流動的で、入札による即時掲載が行われているため、クレームが入っても、掲載された広告を再現することができない。(証拠を持って悪質事業者に交渉することが非常に難しい)

アフィリエイト広告の仕組みやアドネットワーク配信の技術面に関して

  • 広告を実際に作成・出稿しているのはアフィリエイター側ということもあり、販売事業者側が虚偽・誇大広告の責任を認めてくれない。(法令上では販売事業者側に責任があると説明しても、納得されない)
  • プラットフォームの向上により配信経路が多様化・複雑化しており、問題のある広告の出所を確認することが困難である。
  • 効果(ユーザー反応)の大きい広告が優先掲載される仕組みがあるため、虚偽・誇大な内容で誘導する違法広告が目立つという悪循環に陥りやすい。
  • 配信設定や文字・画像の組み合わせにより広告パターンを容易に増やせるため、膨大な広告が存在している。効果を追求しながら試行錯誤している販売事業者ほど、掲載広告の実態を把握することが難しくなる状況がある。

悪質事業者に関して

  • 法改正や規制を強化しても、悪質事業者の意識はなかなか変わらない。(法の抜け道を探す、会社名を変えて同じことを繰り返す、など)
  • 配信された広告の証拠(キャプチャなど)がなければ、対応を拒む。
  • 大手のポータルサイトなどではなく、SNSなどに正体を隠して出稿し、一定の誘導効果が得られたらページを閉鎖して逃げてしまう。
  • 正しい連絡先が表示されていない、または連絡先自体が表示されていない。

自社側での対応に関して

  • 法令遵守に真摯に取り組む事業者ほど負担が増え、広告出稿に関して萎縮しがちになり、経済活動にも大きく影響する。
  • 消費者からクレームが入り調査したくても、代理店やアドネットワーク事業者から必要な情報が得られない(配信技術による理由で、代理店側も把握できていない)。
  • ひとつの広告に対する関係者が多く、各自の責任範囲が具体的に示されていないため何をどこまでやれば問題ないかがわからない。

行政や消費者に関して

  • 派手なうたい文句に対し、あまり疑いを持たずに安易に契約してしまう消費者がいる。
  • SNSを通じた集客など、若年層へのアプローチがしやすくなっている。
  • 返金さえできれば良い消費者も多く、悪質広告に関する情報提供には非協力的。
  • 措置命令では広告主名しか公開されないため、悪質な関係者が把握できない。

制度や体制づくりに関する要望の一例

それぞれの立場により直面する課題が異なることや、対応にかかる時間・コストの捻出、対策の裏付け(法的根拠)の不明確さなどさまざまな問題が浮き彫りになっています。

消費者庁の予定通りであれば、これらの意見をもとに近々結論が出されることになるでしょう。自社の広告出稿状況や今後の見通しを検証し、仮に法改正がなされたとしてもいち早く対応できる準備を整えておきたいものです。

※下記は一例となります。イメージしやすさやバランスを考慮し、加筆・抜粋しています。

関係者全体への提言、要望

  • 全体の中でほんのわずかの悪質業者と悪質アフィリエイターが問題。
  • すべてを同様に対策するのではなく、悪質事業者だけを効果的に排除できないものか。
  • 苦情の多い事業者情報を整理し、行政や関連団体とも共有できる仕組みづくりが必要。
  • 広告の事前確認ができても、どこまで対応すべきかは状況によって異なる。
  • 広告サイズや連動するリンク数なども異なるため、共通ルールを設定するのは困難。
  • インターネット広告やアフィリエイト広告の定義を統一する必要がある。
  • アフィリエイト広告の掲載にあたっては、広告主確認を必須として欲しい。
  • 媒体、広告主、期間、時間帯を特定することにより、その条件で掲載されていた広告を開示してもらえる仕組みを作って欲しい。

行政への要望

  • 違法な広告に対する監視の強化。法整備。
  • 悪質な案件では、広告主だけでなく出資会社や主要取引先への取り締まりも必要。
  • 行政処分や注意喚起を行う際には、その広告・取引で利益を得た会社(広告主だけでなく代理店やASP事業者、アドネットワーク会社など)をすべて公表して欲しい。
  • 購入者コメントが流動的かつ即時的に商品に紐づけられる広告(アフィリエイトの一種)の場合、広告主が事前に確認できない点や、全情報を網羅して把握できない性質をふまえ制度づくりをして欲しい。
  • 適切な取り締まりは必要だが、経済活動を自粛させる形とならないよう考慮して欲しい。
  • 規制を設けるのであれば、広告主が取るべき具体的方法を明確にしてもらいたい。
  • 消費者への啓発を積極的に実施して欲しい。(アフィリエイト広告との接し方、安全な利用方法など)
  • 悪質なアフィリエイト広告に関する情報提供窓口を設定して欲しい。

ASP事業者、アドネットワーク事業者への要望

  • アフィリエイターへの教育の徹底(法令に対する基礎知識、広告主別ルールの順守など)
  • ASP事業者には、案件発生時に問題のある商法かどうかを確認した上でアフィリエイターの募集の是非など判断してもらいたい。

関連団体への要望

  • 業界関係者同士が連携し、アフィリエイターへの研修機会を設けてはどうか。
  • 会員に向け法規制の最新情報を提供すると共に、アフィリエイト広告を適切に管理運営できる仕組みづくりを主体的に行って欲しい。

その他

  • 広告媒体社側でも、継続的な審査を行って欲しい。
  • アフィリエイターには、不適切な広告との報告があったら速やかに指導を受け、適切な内容に修正して欲しい。

まとめ

アフィリエイト広告とひとことで言っても、掲載までのプロセスや利用される技術とツール、関与するアフィリエイター、ASP事業者の特性によって印象が全く異なる場合も少なくありません。それをひとつの規制でコントロールしようとすることの難しさは、言うまでもない事実でしょう。

それでも常に消費者目線を持ち、意義のあるアフィリエイト広告を世に送り出せる事業者が主流となる日はすぐそこまで来ているのかもしれません。

参考資料(外部サイトへ移動します)

筆者紹介
gooの広告審査を商品・サービス広告、企業広告審査を中心に10年以上担当。
媒体基準の策定や見直し、新規広告メニューのルールづくりにも参加。
審査結果を単に伝えるだけでなく、判断要因や背景などの説明に注力。代替表現の提案も行っています。

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